「お前、どれだけ前向きなんだよ。街の大人達は先生やお前が恐いんだよ。この街の者達と髪や目の色が違うから」
息を鼻から吐き、クレハノールは周囲を見回す。
「他の街や都、王都、他国には色々な人がいるし、先生やお前みたいな目の人もいることを知らないんだ。街の者達も一度、街を出てみて知るといいんだ」
腰に掛けてある木刀の柄に触れ、クレハノールは言う。
「本当に馬鹿だ。だから、私は馬鹿な大人達の思い通りにはならない。私がもう少し大きくなったら、悪いことは悪いと言ってやる」
自分のことで憤慨してくれるクレハノールに、カエティスは穏やかに微笑んだ。
「……クレハ、君は将来、この街を治め、国王を助けるウィンベルク公爵になるんだから、街の人達を悪く言ったらいけないよ」
「悪く言っている訳ではない。間違ってると言っているんだ!」
地面を強く蹴り、クレハノールはカエティスをじっと見た。
「先生やお前は何も悪いことをしていないし、傷付けることもしていないのに、ただ自分達と違う色の髪や目をしているだけで怖れるのが頭に来るんだ!」
「ありがとう、クレハ。でも、先生も俺も何とも思ってないから大丈夫だよ。それじゃあ、俺は帰るね」


