公爵の娘と墓守りの青年


悲鳴に近い声を上げ、リフィーアはカイに近付こうとする。
が、短剣が刺さったままのカイの手とイストがそれを止めた。

「リフィーアちゃん、危ないから離れて」

こちらに目を向けることなく、カイが言う。

「嫌ですっ。カイさん、怪我をしてるのに!」

「公爵令嬢、駄目です。本当に危ないんです!」

必死にリフィーアを止め、イストがカイとリフィーアの間に入る。

「そんなこと関係ありません! 私のせいで、カイさんが!」

イストの腕の中でリフィーアがもがく。

「公爵令嬢、落ち着いて下さい。今、公爵令嬢が近付いても墓守りさんを困らせるだけです。ウェル様も落ち着いて下さい」

イストの腕の中で暴れるリフィーアと共に、エルンストの腕の中でウェルシールももがいている。

「エルンスト、止めないで。僕はカイさんとリフィさんを襲った彼を許せない!」

「それでは彼の思う壺ではありませんか。怒りで飛び出すウェル様と公爵令嬢を襲う。彼はそれが狙いなのです。それに気付いて、墓守りさんは公爵令嬢を止めたのです。ウェル様なら分かるでしょう」

「分かる、分かるけど! このままではカイさんが死んでしまう」

「……あのね、俺はそう簡単には死なないよ。刺さったところ、急所じゃないし」

刺さったままの短剣を抜き、カイはやはりこちらに目を向けることなくウェルシール達に言う。