シャベルを構え、カイはウェルシール達に言うと、青年を見据え、更に口を開いた。
「それか、そっちがこの墓地から離れてもらえると一番嬉しいんだけどね」
「……ふん。いくらでも離れてやろう。ただし、お前が死んだ後にな! カエティス!」
そう言って、青年は再び、姿を消した。
「しまった!」
カイは慌てて、一番後方にいるリフィーアに向かって駆けた。
「――え? どういうこと……?」
青年の言葉と、走るカイに驚き、リフィーアは目を見開いた。
そして、その瞬間、目の前に黒い布を被った青年が現れ、短剣をリフィーア目掛けて突き出した。
迫る短剣が怖くなり、リフィーアは目を閉じた。
短剣が何かに刺さる音が聞こえた。
だが、いくら時間が経っても痛みを感じない。
リフィーアは恐る恐る目を開いた。
「――っ!?」
目を開き、リフィーアは息を飲んだ。
ぼろぼろの黒いマントを羽織った大きな背中が目の前にあった。
その背中から赤い色をした光る金属が突き出ていた。
リフィーアは呆然と目の前の背中を見つめ、その光る金属が自分に向けられていた短剣で、赤い色が血、守ってくれたのがカイであることにやっと気付いた。
「カ、カイさんっ!!」


