イストに微笑み返し、ウェルシールは彼の手を取って馬車から降りた。
その間に、エルンストが屋敷の玄関へ近付く。
玄関の前で、ウィンベルク公爵家当主のマティウスが立っていた。
「王都からようこそお出で下さいました、陛下。ありがとうございます」
恭しく頭を垂れ、マティウスはウェルシールに挨拶をする。
「いえ、こちらこそ、お出迎えまでして頂きましてありがとうございます、公爵」
マティウスに笑みを浮かべ、ウェルシールは彼と握手を交わす。
「それで、大事なお話というのは……?」
「はい、陛下を含めたクウェール王家と、我がウィンベルク公爵家のことについてなのですが……どうぞ、私の部屋でお話しましょう」
そう言って、マティウスは屋敷の中に招き入れ、自分の部屋へ案内した。
「――これから話すことはどうか、他言無用でお願い致します」
そう始まったマティウスの話に、ウェルシールとエルンストは驚愕した。
ウェルシールの横で同じく聞いていたイストは苦い表情を浮かべた。
(出来れば、ウェル様にもエルにも聞かせたくない話だったな……)
事情を知っていることもあり、イストは表情を暗くした。


