公爵の娘と墓守りの青年


「でも、どうして、ウィンベルク公爵は使用人を数人しか雇わないの?」

「それはですね。数代前のウィンベルク公爵が『使用人や民達の仕事が分からなくて民の為に、と言えるか!』と発言されまして、それからはウィンベルク公爵家は家事などをなさるようになったそうですよ」

爽やかな笑顔で、イストは説明する。

「そうだったんだ……。凄いな、ウィンベルク公爵家は。クウェール王家もした方がいいかもしれないね」

感心したように何度も頷き、ウェルシールは考える顔をする。

「その前にしっかりご公務をなさって下さい。合間を見つけてはすぐカエティスの都の墓守りに会いに行こうとするのですから」

今後のことを考え始めていたウェルシールに、エルンストはしっかり釘を刺した。

「う……うん。気を付けるよ、エルンスト」

渋い顔になり、ウェルシールはぎこちなく頷いた。
頷くと同時に馬車はウィンベルク公爵の屋敷の玄関前で停まった。

「さ、ウェル様。行きましょう」

馬車から先に降りたイストがにこやかに微笑み、手を差し出した。

「ありがとう、イスト」