公爵の娘と墓守りの青年


『……チュウモンガ多イナ、カエティス。ワカッタヨ。デモ、姿ヲ見テ驚カナイデヨ。サ、奥ヘイコウ』

仕方なさそうに承諾した声は、ゆっくりと遠くへ響いていく。
カイも響く声に続いて、墓地の奥へと向かった。

「さてと、姿を見せてもらえないかな? それと、名前も教えて欲しいな」

『……名前ハスグワカルヨ。デモ、ホントウニ見テ驚カナイデヨ』

「それは見てみないと分からないけど、頑張ってみるよ」

小さく頷き、カイは穏やかに微笑んだ。
すると、カイの目の前にゆっくりと足が現れ、胴体、頭の順に声だけだった者が現れる。
顔を見て、カイは瞠目し、息を飲んだ。

「……嘘だろ。まさか、ディオン?」

ぽつりとカイは呟き、呆然と目の前の少年を見つめる。

『そうだよ』

カイに見つめられた目の前の愛らしい女の子のような顔立ち、少し低めの背格好の少年――ディオンは照れ臭そうに頭を掻いた。

『……だから、驚かないでって言ったのに』

姿を現したことで不明瞭な声ではなくなり、ディオンは茶色の目を恥ずかしそうに伏せ、金色の前髪を一房摘まむ。