公爵の娘と墓守りの青年


「ここではちょっとアレなんで、隊長の家でもいいですか」

「う、うん。それはいいけど……」

「では、早速、行きましょう。ネレヴェーユ様、すみませんが隊長をお借りします」

「ええ、どうぞ」

小さく微笑み、ネレヴェーユは快諾した。

「ありがとうございます。さ、隊長。行きましょう」

「え、う、うん」

よく分からない様子で頷くカイの手をイストは掴み、木々の間にひっそりと建つ小屋へと向かった。
小屋へと歩いていくカイとイストの後ろ姿を見送り、ネレヴェーユとエマイユはビアンに顔を向けた。

「ここからカエティスを離したということは、カエティスのことで俺に話か?」

両手を組み、立ったままのビアンは切株に座るネレヴェーユとエマイユを見下ろす。

「話が早いね。話が早い人は好きだよ」

口の端を上げ、エマイユは膝に肘を置いて頬杖をつく。
座っているのは切株なのに、まるで玉座に座っているかのような態度だ。
横で同じく切株に座っているネレヴェーユはエマイユの前世、トイウォースを思い出した。

「単刀直入に聞くけど、君、カエティスを宿主にしてるの?」

「していない。相棒ではあるがな」