公爵の娘と墓守りの青年


「あっちの方が楽なんだ」

「楽な方を選ぶからだよ。だから、今になって困るんだよ」

カイも大きく溜め息を洩らし、空腹のため苦い顔をしているビアンを見る。

「ねぇ、カエティス。お話の途中だけれど、いい?」

躊躇いがちにカイの腕に触れ、ネレヴェーユが声を掛ける。

「ん? 何だい、ネリー」

「あのね、こちらの方のこと、さっきビアンって呼んだよね?」

「うん。呼んだよ」

「こちらの方、前に私がここに来た時に狼の姿でここにいなかったかしら?」

ネレヴェーユの問いに、カイは大きく頷いた。
その答えにネレヴェーユ達は瞠目する。

「では、貴方は魔狼ですか?」

カイからビアンに目を移し、ネレヴェーユは問い掛けた。

「そうだ。流石、女神。よく知ってるな」

頷いて答えるビアンに、ネレヴェーユとエマイユ、イストが険しい顔をする。

「……隊長。ちょっと、いいですか?」

ちらりとエマイユに目を向けながら、イストはカイに尋ねた。
エマイユと目が合い、彼女もイストに向けて慎重深く頷く。

「ん? どうしたの、イスト君」