公爵の娘と墓守りの青年


「……実はお腹にも傷がって言ったら怒られるから、黙っておこう……」

「なぁに? 何か言った?」

ぼそりとカイが小声で呟くと、ネレヴェーユがにっこりと笑顔で問い掛けた。

「ん? 何も言ってないよ、ネリー」

カイも笑顔でネレヴェーユの問いにうそぶいた。

「……怪しいけど、いいわ。ところで、どうして、ちょっとやんちゃなかすり傷を負ったの?」

「んー? ここの墓地を抑えるのに、俺が邪魔らしくって襲ってきたんだよ。俺を襲う前にここに遊びに来たらしいリフィーアちゃんを襲ってて、庇った時にちょっとやんちゃなかすり傷を負っちゃったんだ」

片手で包帯を器用に巻きながら、カイはネレヴェーユの問いに答えた。

「貴方らしいというか、何というか……。でも、貴方やリフィーアさんが無事で良かったわ」

「そうだね。本当に無事で良かったよ。俺もこう見えて結構な歳だし、昔と比べてあんまり動いてないしなぁ」

伸びをしながら、カイはのんびりと呟いた。

「そうね。だから、しっかり運動してよね、カイ」

にこやかに頷き、ネレヴェーユは言った。

「えぇー! 今から?」

「そうよ。だから、頑張ってね」

ネレヴェーユの一言にカイはがっくりとうな垂れた。