公爵の娘と墓守りの青年


耳に覚えのある声にリフィーアは驚いた。

「……もしかして、ビアンさん?」

「俺以外にここに誰がいる?」

「そ、そうですけど、ビアンさん、どうして人間の姿に……?」

ビアンが人間の姿になれないと思っていリフィーアは首を傾げた。

「お前を運ぶためだ」

ぶっきらぼうに青年――ビアンは答えた。

「どうして、私を……?」

言いながら、リフィーアはどうして眠っていたのかを思い出した。

「あっ、私、知らない人達に襲われて……」

ぽつりと呟いて、リフィーアは固まった。
怪しげな連中達に襲われ、首に強い衝撃を受けて気を失ったはずだ。

(……その後、私、どうなったの?)

リフィーアは眉を寄せた。
誰かに助けられたような気がするのだが、それが夢なのか、現実なのかが分からない。

「――カイが小娘を運ぶように言ったから、仕方なく俺が運んだんだ」

まるでリフィーアの心の声を聞いたかのように、ビアンが不機嫌な声で答えた。

「そうだったんですか。ありがとうございます、ビアンさん。あ、ところで、カイさんは何処にいますか?」