「――名前はリフィーア。カイ、どう? 良い名前だと思わない?」

(えっ?!)

「リフィーアちゃんか。リゼル君とフィオナちゃんの名前からかぁ。うん、良い名前だね。きっと……絶対、幸せになれるよ」

爽やかな声でカイは二人に告げた。

(私が生まれた時のこと……? じゃあ、男の人と女の人は……お父さんとお母さん?)

覚えていないはずの父リゼラードと母フィオナとカイの会話を聞いて、リフィーアは暗闇の中でもがいた。

(顔が見たい! どうして、私だけ暗闇の中なの?!)

肖像画でしか見たことがない両親の顔が見たい。リフィーアは必死に暗闇から抜けようと走り回った。
だが、抜け出せない。

「ありがとう、カイ。それで君にお願いがあるのだけれど……いいかな?」

リフィーアがもがいている間も彼等の会話は続いている。

「もちろんいいよ。何だい? リゼル君」

「……もし、僕達に何かあったら、この子を……リフィを守って欲しいんだ」

真剣な声で男――リゼラードはカイに告げた。
しばらくの間、カイは黙った。

「……分かった。二人に何かあったら、俺がこの子を守るよ。ただし、二人共、絶対に諦めないこと。いいね?」