結愛たちが話していた公園で石田さんと待ち合わせした。結愛たちとは時間をずらして十三時に。

 あの時、好きじゃないのに「付き合おう」って言葉を石田さんに伝えたの、後から本当に後悔した。

 結愛が陸と付き合いやすくなるためだとか考えていたけれど。結局は、自分が石田さんと付き合うことによって、逃げたというか、結愛と陸を見て傷がつくのを最小限に抑えるためだったのかもしれない。
 
 自分のため……。
 自分の気持ちをごまかすため。

 この待ち合わせだって、きっと石田さんは何か期待しているかもしれない。これからしようとしている話の内容、石田さんを傷つけてしまうなぁ。もしも自分が石田さんだったらどんな気持ちになる? 

 何この思わせぶりな俺の態度。
 自分が嫌になる。

 時間よりも早く来たのに、石田さんは、もっと早く来ていた。

 想像通り、俺に何かを期待しているようなまなざしで見つめてきた。

「海、楽しかったね!」

 眩しい笑顔で石田さんは言った。

「おぅ」
「海で最終電車乗れなかった時、あれから大丈夫だった?」
「うん。陸のばあちゃん家に泊めてもらったんだ」
「そうらしいね。結愛も、一緒にだよね……」
「うん」
「結愛も……。」

 石田さんは途中で話すのをやめ、何か言いたげな顔をしていた。

「あのね、石田さん! 今日は、石田さんに話さないといけないことがあるんだ。あっ、あそこの木の下辺りに行こうか」

 暑くて太陽の光が強かったから、俺たちは木陰に移動した。

「石田さん……」

「何? 改まった感じでどうしたの?」

「石田さん、ごめん!」

 全力で俺はあやまった。

「突然、なんで謝るの?」
「俺、石田さんとは、付き合えない」
「……うん、知ってた。そうだよね!」
「えっ?」
「結愛が、好きなんでしょ? そしてきっと結愛も今は悠真くんが好き、なのかな?」
「……うん」
「知ってたよ! だって、悠真くん、結愛のこと、学校でもずっと見つめてたもんね。私、悠真くんのこと、いつも見ていたから、そういうの、気づいてたよ! 結愛の気持ちもね。だって結愛、悠真くんのこと好きって教えてくれなかったけど、態度がすごく分かりやすいんだもん」

 気がついてたんだ。
 しかもふたりの気持ちを。
 
 なんか、俺、最低なことばかりしてるな。
 逆の立場だったらキレそう。

 なのに石田さんはちっとも怒っていなかった。むしろ優しい顔でこっちを見ている。俺の気持ちを知ってたうえでこんなふうに接してくれていて――。

「本当に、ごめん……」
「いいよ! 予想はしていたけれど、振られたのはやっぱり悲しいけれど、結愛のことも大切だから。ふたりとも幸せになってね!」