海に着くと陸が結愛を誘い、ふたりは海の方へ歩いていった。
 結愛の浮き輪、俺が引っ張りたかったのになぁ。

「ねぇ、結愛たち、行っちゃったね」
 石田さんが言った。

 どんどん遠くに行ってしまうふたり。
 それを立ち止まったまま眺める石田さんと俺。

 結愛は結局、俺よりも陸の方が良いんだろうなぁ。

 俺たちは一応付き合っている形だけど、結愛の気持ちはいつも陸の方に向いていて。

 結愛の心の隙間を見つけて、そこからジワジワと、俺に気持ちが向いてくれるようになってくれればなとか考えて、積極的に頑張ってはみたものの。そもそも、結愛の心に俺が入り込むすき間がなかった。

「よいしょっと」

 石田さんが砂浜に座る。
 本当は俺も結愛たちのところへ行きたいけどなんとなく行けない気分。石田さんの隣に仕方なく座った。

 結愛と陸、ふたりの後ろ姿を改めて眺めていたら、あのふたりが付き合えば良かったんじゃないかって思えてくる。お似合いなカップル。
 そもそも俺はふたりがくっつく運命を邪魔している感じだし。ただの邪魔者だな……。

 ――別れた方が良いのかな?