すべての世界で、キミのことが好き❤~告白相手を間違えた理由

 朝、駅前までお父さんの車で送って貰えることになり、今車の三列シートの後ろに乗っている。

 一番先に、悠真の家に迎えに行く。

「おはよう!」
「おぅ」

 朝に弱い悠真は無愛想に返事をすると、真ん中のシートに。

 続いて、桃音ちゃん。私の隣かな?って思っていたけれど、悠真の隣へ。

 積極的だなって思うのと同時に、なんだか心の中がちょっとモヤモヤする。

 最後は陸くんが乗って来た。
 空いている席が私の隣しかないから隣に。

 出発してすぐに、悠真が「俺、後ろがいいんだけど」とか言い出し、ちょっと気まずい雰囲気に。最初から乗れば良いのに。

「すぐに着くよ?」

 とっさにでた私の言葉。

 ちょっとムッとしながら外を眺めている悠真。

 彼、なんだか小さい子供みたい。
 前は何考えているのか、よく分からなかったから、それよりはいいかも。

 すぐ隣には、好きなはずの陸くんがいるのに、窓と椅子の隙間からかすかに見える、悠真の頭ばかりを見ていた。


✩.*˚

 十五分ぐらいの距離なのに、車内の空気が気まずい。

 特に前の二人。最初は桃音ちゃん、悠真の隣で嬉しそうに彼に話しかけていたのに、悠真が冷たく返事をするから、静かになった。斜め後ろから見える桃音ちゃんの横顔がしょんぼりしていた。

 ごめんね! 

 悠真の代わりに私が謝りたい気持ちになる。

 そしてふと頭をよぎる。

 彼は他の人には冷たいんだけど、私にだけは、なんか違うなって。

 駅に着いた。
 車を降りて歩こうとしたら、運転席の窓が開いた。

「結愛!」

 めったに聞くことのない、お父さんの大きな声で私は振り向く。

「気をつけてな!」
「うん、ありがとう」

 お父さんのその言葉が珍しくて、とても貴重な感じがした。

 しばらくその言葉は、お父さんの声のまま、頭の中をこだました。 

 駅の中に入ると切符を買い、改札口を通る。陸くんは慣れているみたいで、私は陸くんの真似をしながらついて行く。

 まだ、時間に余裕があり、桃音ちゃんとトイレへ。

 手を洗い、ふたりは鏡を見る。

「桃音ちゃん、さっきは悠真、ごめんね」

「なんで? なんで結愛が謝るの?」

 私が謝ると、鏡を見ていた桃音ちゃんがきっとした顔でこっちを向いて言う。

「え、なんとなく」

「なんとなくって意味が分からない。結愛の悠真くんじゃないのに、結愛が謝るの変だよ!」

「確かに……」

 桃音ちゃんはひとりでトイレを出ていこうとする。私は急いで後をついて行った。

 ――この旅、どうなるんだろう。本当に。