すべての世界で、キミのことが好き❤~告白相手を間違えた理由

 陸くんのおばあちゃんの家に行く日が、あっという間にやってきた。

 この日は部屋に貼ってある花のイラストが書いてある月別カレンダーに、他の予定よりも特別な、大きなピンク色の丸印をつけていた。

 だって、とても楽しみだったから。

 今日私は、初めて電車に乗る。
 きちんと乗れるかなって、ドキドキとワクワクが交差する。

 今日のために可愛いワンピースを買った。
 薄いピンク色の半袖ワンピースで、袖とウエストがキュってしている。そして胸元にはレースの黒いリボンがワンポイントで付いている。

 髪の毛も普段、上手く結ぶのが苦手だから下ろしっぱなしだったけど、今日は頑張って、雑誌に載っている可愛い髪型にしてみた。ふたつ縛りの編み込み。難しかったけれど、なんとか仕上がった。

 全身がまとまったら、玄関にある全身鏡を見てくるっと回ってみる。

「はぁ、可愛いって思ってくれるかな? 自信ないなぁ」
 
「誰に?」

 ひとりごとを呟いていたら、後ろから声がした。

「わぁ! お姉ちゃん! いきなりビックリした」
「ふふっ! ごめんごめん。可愛いよ! 大丈夫。」
「本当に? 大丈夫? この髪型、後ろから見たら変だ!とかない? 本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ!ってか誰に可愛いっておもわれたいの?」

 お姉ちゃんが興味津々な顔で目を輝かせながら質問をしてくる。

 ――誰に可愛いっておもわれたいんだろう。


 今までは陸くんばかりが頭に浮かんできたのに、今は――。

 頭の中がぐるぐるしかけた時、お姉ちゃんが言った。

「自信ないときの対処法教えてあげるよ」
「何それ、今すぐに教えて欲しい」
「簡単だよ! 背筋をピンッと伸ばして、頭のてっぺんに見えないヒモがあって引っ張られるように……」

「こう?」

 教えられたとおりに鏡をみながらしてみる。なんか、お腹が自然にひっこんで姿勢がよくなった気がする。

「そうそう、そしてね、心の中で強く思うの。今の私は誰よりもキラキラしているって!」

「キラキラキラキラ…私は誰よりもキラキラしている……うーん、難しいなぁ」

「これね、撮影の時やるんだぁ。私、普段本当に自信がなくてね、せめて撮影の時だけでもキラキラしたいなぁって悩んで、考えたのが、これ!」

 お姉ちゃんは中学の頃から、スカウトされて、たまに雑誌のモデルをしている。私から見たお姉ちゃんはいつもキラキラしているけれども。普段は自信がないのかぁ。

 誰にだって、悩みはあるんだね、きっと。

「ありがとう、お姉ちゃん!」
「で、誰に可愛く思われたいの?」
「秘密!」

 今はなんだか、気持ちが中途半端で宙ぶらりん。だから今は、まだ秘密!

「秘密じゃなくなったら、教えてね!」
「うん!」