そんなことを考えながら外を眺めていると、ドアの開く音がかすかに聞こえた。

 ドアの向こう側にいたまま姿を見せてこない結愛が、話しかけてくる。

「ドアの前まで来てもらえる? 絶対にドアを開けないでね!」

 ドアを開けないで?
 なんで?

 てか、これ絶対に陸だと思ってるよな。

 だって、陸と話す時の彼女の声は、俺と話す時よりも甘い声なんだ。

 普段、陸にだけはそんな風に話すんだなと改めて考えると、胸がズキンと痛くなる。
 
 もう、どうにでもなれ!

 言われた通りに動いてドアの前まで、来た。

 下の方でゴトンと音がする。
 ドアの窓から覗くと、彼女はドアにもたれて座っていた。

 俺も同じように、ドアにもたれかかる。
 これからどうなるんだ?

 しばらくすると、彼女は言った。

「ずっと、好きでした。付き合ってください」

 いきなり告白!
 顔を合わせないまま告白をするとは想定外。

 あぁ、これか。結愛が陸に伝えようとした言葉。

 俺は陸よりもずっとずっと長く、結愛のそばにいたのに。
 誰よりも結愛のことが好きな自信があるのに、なんで陸?

 こんなに可愛い結愛に、こんなに可愛く告白されたら、断るやつなんていないよな。

 返事に悩む。
 実は陸ではないことを伝えるべきか。

 彼女は姿の見えない俺のことを陸だと思っている。
 でも、実際には俺がここにいて、その言葉を俺に当てて言ったんだ。

 もうよく分からなくなってきた。

 ずっと好きだった結愛が俺に――。

 俺が告白されたってことにして返事をすれば良いのかな。

 俺に言ったんだ。そう、陸じゃなくて俺に!
 だから俺の、今の気持ちを素直に出せばいいんだ。

「おう、いいぞ!」


 頭がぐるぐるしすぎて、何が正解か分からなくなり、そのままの俺の気持ちを、返事した。

「……!」

 ドアが勢いよく開いた。

「えっ? 何で悠真が?」

 結愛は目をまんまると見開いていた。
 その姿も可愛かった。

 もう、その告白、取り消せないからな、結愛……。


 自分が本当に告白された気持ちになってきた。
 心が踊り、気持ちが高まる。

 今まで心の奥底にぎっしり押し込められていた“結愛が好きな気持ち”が、一気にあふれだす!