思いがけない、いきなりの告白。
 暗いけれど、かすかに見える悠真の瞳が濡れてきた。

「あっ、返事はいらないよ! ただ伝えたかっただけだから。それに、結愛、きっと彼氏いるしょ?」
「……いないよ」
「はっ? マジで?」
「うん」
「陸、陸は? もう付き合ってないの?」
「中学卒業した後、すぐに別れたよ!」
「そうなんだ……。あ、あのさ!」
「ん?」
「じゃあ、付き合ってもらえたり、する? しないよね……いや、いきなり何言ってるんだろう、ごめん」

 彼はあせっている。

 悠真と最後に会ったのは、中学卒業の時。それ以来だから、三年ぶりぐらい?

 改めて悠真のことをじっくり見ると、あの時よりもすごく身長が伸びていた。顔つきも大人っぽくなっていて。

 ふわっと、小さな頃の悠真を思い出す。

 表向きは、どんって構えているように見えて、でも心は繊細で。

 悠真は、悠真のお父さんが家から出ていった後、ぽつりと私に聞こえるように呟いていた。

「父さんに、好きだって伝えたかったな」って。

 お父さんにも言えなかった“好き”。
 小さい頃から私のことを好きでいてくれたってことは、もしかして私に初めて『好き』って言ったのかな? いや、他の人にも言ってるかもしれないけれど。

 でも、悠真はきっとその言葉、軽はずみには言えないよね。

 私は、悠真が私にくれたその言葉を、私の心の宝箱に、ずっと大切に閉まっておきたいと思った。

「付き合うの、いいよ! よろしくお願いします」

 私は丁寧に答えた。

 その時の驚いた彼の表情。とても大きく目を開き、初めて見た表情だった。多分一生忘れない気がする。

 告白を受け入れた理由。それは、悠真が私に対して思ってくれているような“好き”を、私も同じように彼に対して思えるようになるなって感じたから。そう、私の気持ちがすぐ彼の気持ちに追いつける気がした。