部室に戻ると、撮った写真の編集を始めた。
日葵の撮る写真は、ほかの人とは少し違っていた。
写真の重点があるのは選手の表情だった。

「おーい、日葵?」

呼ぶ声がする。
彼女の一番好きな声。

「いまいく!」

スクールバックを片手に飛び出すと
そこにいたのは、タオルを首に巻いた球児だった。

「晴人お疲れ様。」

「お前さ、運動部じゃないんだからもっとはやく
 帰れよ、おばさん心配するだろ。」

「金曜日は晴人と帰るって決めてるの、お母さんには言ってあるし。
 それより、ちゃんと明日の試合の準備できてるの?」

「俺じゃなくてもっと自分の心配しろよ」

「だって、あと2か月しか晴人の野球してるとこ見れないもん」

「まあ、確かにな。」

「ほら、アイス解けるよ?」

「わかってる。」


近くの駄菓子屋で買った1本70円のアイスバーを
口にほおばりながら
そんなたわいもない会話をしながら日が長くなった
夕暮れの道をゆっくり歩く。
普段歩くのが速い晴人は、私の歩幅に合わせてくれる。
そんな金曜日のこの時間が大好きだった。