5月某日。
気温はとっくに20度を超える日が何日も続いた。
汗をぬぐいながらグランドを走る姿。
腕筋の筋肉がバットを振り切ると浮き上がってくる。
ファインダー越しに見えるそのユニフォーム姿に
何度惚れかけただろう。
太陽の日差しに負けない彼らの熱さはこの夏を一層輝かせた。
彼らの青春は、あと残り2か月ちょっと。
きっと人生の中で何よりも彼らが時間を割いてきたであろう
野球にもそろそろ終止符を打つときが来たようだ。
思い返せば二年前。
まだまだ初々しかった彼らはこの夏の熱さを知ることも
過酷さを知ることもなかったであろう。
でも今は違う。
その過酷さと悔しさを知ったからこそ今の彼らは
がむしゃらに走れるのだ。

日葵はカメラに目を落とす。
データフォルダは、野球一色だった。
ずっと見てきたからわかる。
ずっと撮ってきたからわかる。
日葵にとってもこの夏は彼らとともに戦う勝負の夏だった。