不協和音ラプソディ





私が隠し持っていた理由を自覚させられたのは、浬の温度が唇に触れてから。


「……っ」


隣に座る浬が、頬杖をついていた私の手を取って、流れるようにキスをしてきたのだ。


重なる唇は、私のそれをやさしく包み込んで、ゆっくりと、味わうようにはなす。



決して長くはなかったのに、唇の隙間から私の中に入ってくる浬の吐息があつくて。確かめようとしてくる視線が、危うくて、なんかダメで。


鼻腔をかすめるアルコールやタバコのにおいも、それらを加速させた。



「そんな顔、するのな」


もっと欲しいと、思ってしまう。



私の表情を読んで、ふたたび近づいてくる浬の唇を、ギリギリの理性で止める。



「私には、手出さないんじゃなかった?」

「あんずが、スイッチ押したんだろ」



その手を、撫でるように触られて包まれれば、もう、浬の思うまま。


見せかけだけの盾は、簡単に、浬のいうことを聞く。


背中にまわってくる、反対側の手の存在を感じながら受け入れた、2回目のソレは、容赦がなくて。理性を完全に奪われた私は、あっさりと、最後まで、浬の侵略を許してしまったのだ。



浬が私のことを、好きかどうかも分からないまま。


どういうつもりで、男女の関係に踏み込んだのかを聞けないままで。