不協和音ラプソディ





私の言葉を聞き切った浬の表情を眺めていると、なんで今更、今になって、と思う。



「…なんで杏まで。会わないくらいで変わんねーよ」




こんな風に私との別れを避けようとしてくれるなら、その想いがあるなら、もっと早く、口に出して伝えてほしかった。

歌詞にして、曲にして、表現してくれていたのなら、他人にではなく、まずは私にみせてほしかった。


私にとっては、世間一般の音楽的評価なんてどうでもいい。出来栄えなんて気にする必要もない。


ミュージシャンとしての浬じゃなくて、何者でもない浬にとっての、かけがえのない人でいたかった。想っていてほしかった。


その想いを、ただ、知れたら、それでよかった。




…私は、ただ。


ただの男としての浬に、愛されていたかった。




「変わるよ。浬だって、本当はそれを望んでる」


「…っ、」




私の前では、ただの男でいてほしかった。



そんな私の考えが、浬の羽根を啄んでいってたのかもしれない。



……ごめんね。