【拓也side】


「キャー!清美様!!」




「清美様、こっち見て!!」




めんどくさいなあ、と思いながらも手を振ってみせる自分。




「キャーー!!」




うわ、いつか鼓膜破れるって。




こんな事を思うしか暇つぶしがない“僕”。




女の子ももう少し静かだったら可愛いのになあ。




でも悪いのは女の子達じゃなくて僕の顔。




両親が元モデルで、そんな2人の間に生まれた僕は、そりゃあ顔立ちは整っている。




自分で言うのもおかしいかもしれないけど、だってどっちに似たとしても顔は良くなる。




この顔は便利な時もあるけれど、悪い時もある。




今みたいに。




もうお昼か。




ああ、どこに行っても視線が痛い。




いつか解放されないかなあ。




……ん?




あれはー、女の子?




そこには階段でバランスを崩して、今にも落ちてしまいそうな女の子の姿。




めんどくさい事になりそうだけど……見て見ぬふりも出来ないよね。




女の子の下に手をやり受け止める。




え……軽っ。




こんな事を思うのは失礼かな、と思っていると目を開けた女の子。




始まるぞ、うるさいのが。




「だ、誰っ……」




「………え。」




この子、今僕のこと誰かって聞いた?




聞いたよね。




居たんだ、この学園に僕のこと知らない子。




ふーん、それはそれで面白い。




「僕は清美拓也。聞いた事ない?」




そう言うと目を丸くする女の子。




「あ、あんたが……清美拓也?」




おお、名前は知ってるんだ。




てか……僕今あんたって言われたよね?




生まれて初めて。




「………て。」




「え?」




「下ろして!!」




ああ、そうか。まだだった。




「た、助けてくれてありがとうございます。じゃ、じゃあこれで。」




あれ?何も言ってこない。




やっぱりこの子、他の子とは違うな。




面白い。




「待って。」




「な、なんでしょう……」




もうちょっとこの子と話してみたい。




そんな事を思っている自分がいた。




「僕とお昼食べない?」




「………え?」