【梨愛side】


土曜日。
梨愛とタタは、現地集合で約束した。
梨愛、服大丈夫!?
もう寒くなってきたから、ベレー帽とニットワンピース、ブーツのベージュとピンクを主にした服装にした。
変じゃないかな……!?
昨日徹夜で選んだから、ちょっと眠い。
今日梨愛達がデートするのは、少し遠いところにあるデパートと遊園地が一緒になっている、
『フリルガーデン』。
ここは、親子連れやもちろんカップルにも人気がある、純麗の家の会社が立てたテーマパーク。
ここにある砂時計のオブジェの前で待ち合わせにしていた。
………んだけど、早く来すぎてしまった!
まだ、予定時間まで30分ある。
そう思いながら砂時計まで歩いていくと、もうすでにタタが来ていた。
「タタ!?まだ30分前だよ?」
そう言うと、タタは苦笑いをして。
「楽しみで早く来すぎちゃった。」
「………っ!もう、からかわないで!」
「え〜?本心なんだけどなぁ。」
そんな会話をしていたら、ふと目に付いたのはタタの服装。
ゆるっとしたズボンにタートルネックのニット。そして上からコートを羽織っていた。
タタ、かっこいい………。
見惚れていると、タタが梨愛に言う。
「リアちゃん、私服すごく可愛い……」
「っ、タタだってかっこいいよ!!」
「そう?ありがとう。じゃあ、行こうか。」
あ、あれ?これ、梨愛がまた振り回されてない!?
………いや、今日はちゃんと作戦をねってきたんだから!
そう意気込んで、タタと梨愛はまずデパートに向かった。
「わあ………!」
梨愛は、目の前に広がる景色が楽園にしか見えなかった。
ケーキなどのスイーツ専門店やカフェ、可愛いポーチなどが売っている雑貨屋など、可愛いものに目がない梨愛は、目を輝かせずにはいられなかった。
「ふふ、リアちゃんが行きたいところ、全部回ろうか。」
そうタタが言ってくれて。
「うん!」
そう言って、梨愛は勢い余ってタタの手を取りお店に入った。
「ねえ、このヘアゴム可愛くない!?あ、こっちのも可愛い!あ、あっちのイヤリングも可愛い!」
そうはしゃいでいると、梨愛はハッとした。
タタの事、放ったらかしだ!
梨愛が1人で盛り上がっちゃった………。
ダメダメな自分にへこむ梨愛。
タタはそんな梨愛に気づいたのか。
「リアちゃん、その様子だと欲しいものいっぱいあるみたいだね。どれが欲しいの?」
「えっとね、これとこれと………これ!」
その3つを手に乗せてタタに見せる。
すると、タタは梨愛の手からその選んだアクセサリーなどを持ち上げて。
「ちょっといい?」
「?うん。」
すると、タタが歩いていくのはレジの方。
タタ、まさか!
「これください。」
わー!やっぱり!
梨愛はそんなタタを全力で止めようとする。
「タタ、ダメだよ!梨愛自分で買うから!タタはタタの欲しいもの買って?」
むしろタタの欲しいものを梨愛が買ってあげたい………。
「いや、奢らせて。僕はリアちゃんの笑顔が見れたら十分だから。」
うっ、何そのめちゃくちゃ優しい王子様みたいな………。
「だから、ねっ?」
「うう………分かったよ。ありがとう、タタ。」
「いいえ。」
タタに負けてしまった。
それに、はしゃいでいてタタのための作戦の事完全に忘れてた!
では、ここから作戦を実行します!


梨愛は、タタを誘ってカフェに来た。
どれにしようか迷う………。
「リアちゃん、決まった?」
「あっ、ちょっと待ってね………これ!」
タタを待たせる訳にもいかず、梨愛は2択で悩んでいたうちの1つの、いちごのパンケーキとミルクティーを頼んだ。
それにしても………周りからの視線がすごい。
いや、全部タタになんだろうけど。
女子達がタタに釘付け。
もう…………。
すると、ナイスタイミングでパンケーキ達が到着した。
「こちらストロベリーホイップパンケーキとピスタチオパフェとミルクティー、そして最後にホットのブラックコーヒーでございます。」
店員さんにはお礼言わなきゃね。
「ありがとうございます!」
そう言うと店員さんは顔を赤くして……
「い、いえ………」
と言って戻って行った。
顔赤かったけど、寒いから風邪には気をつけて欲しいな………と思いながらミルクティーを
一口。
「ん〜、おいしい………」
幸せ………。
タタはピスタチオパフェ頼んだんだ。
それにブラック………梨愛苦いからあまり好きじゃないな。
おっと、いけないいけない。作戦を忘れるところだった。
「タタ、はい、あ〜ん。」
そう、あ〜んだ。
単純な作戦だけど………タタにドキッとさせる!
「ありがとう。………美味しいね、パンケーキ」
「うん!」
あれ?美味しいとは言ってくれたけど、なんか思ってたのと違う………。
もしかしたら甘いもの苦手!?
でもピスタチオパフェ頼んでるし………はっ、ブラックコーヒーは甘さをしのぐため!?
無理させちゃったかな………。
記憶があったら違ったのかな。
梨愛はあまり上機嫌じゃないままカフェを出た。
次は………服!
の前に。
「タタはどこか行きたいところある?」
「僕?」
「うん。」
せっかくのデートなのに、ずっと梨愛の行きたいところ行ってるから………。
でもタタは遠慮気味で。
「僕はいいよ。リアちゃんが行きたいところ、全部回ろうって言ったでしょ?リアちゃんもっと行きたいところあるでしょ。」
うっ、バレてた。
でも………
「本当にいいの?」
「うん。」
その笑顔に梨愛はなぜかドキッとする。
梨愛、重症かも………。
「じゃあ、行こう!服見に行きたいの!」
そしてまた、タタの手を取る。
いつまでも、この幸せが続きますように。

「可愛い………!」
レディースの冬服が並ぶ店内は、またしても楽園に見えた。
このワンピース可愛い!
それにこのブラウス………家にある服と合わせたら可愛いかも。
そんなこと考える間も、梨愛はタタと手を繋いだまま。
ここで作戦その2!
「ねえねえ、タタ!この服どう、似合う?」
そうしてくるっと一回転して見せた。
どうだっ!
これこそ、タタはドキッとしてくれるはず!
「うん、似合ってるよ。それに、このスカートとか冬らしくて可愛いと思うよ。」
「あ、ありがとう………」
アドバイスもしてくれるし可愛いって言ってくれるけど………やっぱりなんかタタ変?
なんて言ったらいいんだろう………あまり目を合わせてくれない、ような?
気がするような、しないような………。
もう、わかんない!
梨愛は、さっさと服を買ってお店を出た。
「リアちゃん、御手洗行ってきてもいい?」
「うん!」
そして、梨愛は1人になった。
すると。
「ねえねえ、君高校生?」
「可愛いね。」
「俺らと一緒にこれから遊ぼうよ。」
………え?これって、もしかしてナンパ?
本当にする人いるんだ。
なんて思いながらも、梨愛は焦ってる。
ど、どうすればいいの………。
多分、大学生くらい。
何も出来ないまま戸惑っていると、壁と男の人3人で取り囲まれてしまった。
「ねえねえ。」
段々と近づいてくるけど、逃げ場がない。
すると、1人の男の人が梨愛を触ろうとして手を伸ばしてきた。
「え………」
思わず声がもれた。
助けて…………!
そう思っていたら、目の前の男の人の手が下がった。
「おいてめぇ。何触ろうとしてんだよ。」
タタ………!
安心はしたものの、タタ、すごい怒ってる……。
男の人たちの方がなんだか心配になってきた。
「人の女に手ぇ出すんじゃねぇよ。」
そう言うと、タタは男の人たちを離した。
そして男の人たちはヒッと声を上げて逃げていった。
そしてタタはこちらにかけてきて。
「リアちゃん、大丈夫?」
「うん、ありがとう…………」
「どこか触られた?」
「ううん」
そう言うと、タタはホッと息を吐く。
助けてくれてる時のタタ、かっこよかったなぁ。
そう見惚れていると、タタはこちらを見るのをやめて。
「じゃあ、行こうか。」
と、フイッと別の方向に向いてしまった。
やっぱり、今日目を合わせてくれないような?
そして、梨愛とタタは遊園地に向かった。
フリルガーデン………来るの初めてじゃないけどやっぱりデパートと遊園地どちらもすごい。
人気でとても賑わいがある。
ジェットコースターからの叫び声やアトラクションの音が辺りを飛び交っている。
「リアちゃん、どこから行く?」
そうだなあ………全部行きたいから、まずは近いところから行こう!
「コーヒーカップ、行きたい!」
「じゃあ、行こうか。」
今度は、タタが梨愛の手を取ってくれて。
ドキドキしちゃう………梨愛が赤くなってどうするの……。
そうして、遊園地の約半分のアトラクションに乗り終えた。
梨愛は気づいた。
これ………全部無理じゃない!?
フリルガーデンは、敷地が大きい為それに伴ってアトラクションの数も増す。
だから、半分に乗っただけでも結構凄いことなのかもしれない。
すると。
「リアちゃん、あれ行く?あれならゆっくり楽しめるよ。」
そうタタが指さしているのは、木々で囲まれたおしゃれな迷路だった。
しかもとても大きい………。
でも、大きいからこそ休憩にはなるかもしれない。
「じゃあ、あれ行こう!」
そうして、タタと梨愛は迷路に足を踏み入れた。
「綺麗…………」
梨愛は思わず呟く。
迷路だから遠くまでは見渡せないものの、飾られている花や、時々見る休憩場所がとてもおしゃれだったりしていて、梨愛は目を奪われた。
学園以外でこういう場を見るのは新鮮で、さすが純麗の家のテーマパーク!と梨愛は思っていた。
それで、梨愛ははしゃぎすぎてしまった。
「リアちゃん!」
そんな声は梨愛には聞こえておらず。
「あれ、タタ………?」
タタと、はぐれてしまった。
そういえば、タタのこと置いて走ってきちゃった。
タタが、いない………梨愛、迷子になった………。
声を上げてタタを呼ぶ。
「タター!タタ、どこー?」
ゆっくり進んできたかは体力はあるものの、大きい迷路が故に、はぐれた時は見つけるのが困難だ。
高校生にもなって迷子になる人、そうそういないと思う。
でも自分の今置かれている状況に、梨愛は情けなさを覚えた。
「……タタ、どこなの………?」
不安から、梨愛の瞳には涙がたまっていた。
「うう、タタ………」
梨愛が、その場にしゃがみ込んだ時。
確かに聞こえた。
「リアちゃん……!」
姿が見えると同時に駆け寄ってきてくれる彼。
梨愛には、その姿が白馬に乗った王子様に見えて。
「リアちゃん、大丈夫?ごめんね、僕の不注意で……」
そう手を差し伸べてくれた所の木には、ハート型の穴があいていた。