ワケありイジワル王子はツンデレ姫様を溺愛したい。

【拓也side】


最近、僕はリアちゃんの笑顔を消してしまっている気がする。




慰めなんていらないかもしれないけど、慰めたくて。




でも、それは僕の役目じゃない。




水野亮………。




リアちゃんと、どういう関係なのか。




気になってしょうがない。




リアちゃんと水野は、付き合ってるのか?




「俺は………っ」




おっと、危ない。




素を思わず出してしまいそうになった。




リアちゃんに、僕のことなんて説明すればいいかな………。




やっぱり、そのまま正直に話すしか……。




でも、そんな事したら前と同じ様に、傷つけてしまうかもしれない。



リアちゃんにそんな事、絶対したくない。







最初は、大抵の媚びてくる令嬢と同じだとしか思っていなかった。




だから、思わず階段でドジしているのを助けた時はしまったと思った。




でも、リアちゃんは僕に向かってこう言った。




誰、と。




自分で言うのもなんだけど、僕の家は有名な企業を営んでいて、父は社長だ。




この聖・神華学園………大抵が家が裕福な者が通っているこの学園。




その学園に入っているのに、僕の顔を知らない子がいると知り、僕はここ最近で一番びっくりした。




それからというもの、僕はだんだんリアちゃんに惹かれていった。




天然なリアちゃんに僕の気持ちは伝わらないとしても、ただリアちゃんのその笑顔を見ていられるだけで幸せだった。




でも、いざリアちゃんが他の男と仲良くしているのを見ると、どうしても妬いてしまう。




リアちゃんの隣にいるのは、僕がいい。




そう思っていると、後ろから声がした。




可愛らしい、女の子の。




「タタ………」




僕のことをそう呼ぶのは、彼女しかいない。




「リアちゃん!」




嬉しくて、つい名前を呼んでしまった。




リアちゃんの事を、昨日泣かせてしまったばかりなのに………。




僕は謝ろうとした。




「リアちゃん、ごめ…………」




「タタ、昨日はごめんなさい!」




………え?




「なんでリアちゃんが謝るの?リアちゃん何も悪いことしてないよ?」




「ううん、梨愛が悪いの!」




リアちゃんは自分を責めるようにして、スカートの裾を掴んで話し始めた。




「タタだって何も悪いことしてないし、亮が勘違いしてタタの事責めちゃうし…………タタに嫌な思いさせて、ごめんなさい。」




苦しそうなリアちゃんの瞳からは、罪悪感が溢れていた。




リアちゃん…………。




じゃあ、どうして泣いていたの?




そう聞こうと思ったけれど、先にリアちゃんが口を開いて。




「ねえ、タタ………1つ、気になってる事があって………」




気になってる事?




廊下の窓の向こうにある木は、風に揺らされて綺麗な音色を奏でているようにも聞こえた。




僕とリアちゃんは、その音色に包み込まれる。




「どうしたの?」




すると、リアちゃんは少しばかり大きく息を吸って。




「タタと……は、葉月さんは………どういう関係なの?」




え?




予想外の質問に、頭が一瞬混乱する。




「葉月さんって………ミユの事?」




そう言うと、リアちゃんはコクリと頷く。




「ミユとは、幼なじみなんだよ。」




「幼なじみ?」




「うん、親同士が小学校時代から仲が良くて、いつも僕の両親もミユの両親も仕事で忙しくしてて、俺とミユはいつも2人で遊んでたんだ。」




ミユの両親も、海外を主に会社を経営している。




「でもミユの会社の影響で、小学校4年生の時に海外に行ったから……ミユと会ったのは5、6年ぶりなんだ。」




「そうなんだ………」




質問には答えたけど、リアちゃんはまだ浮かない表情。




「タタは、葉月さんの事好き?」




身長の低いリアちゃんは、僕の方を見ると自然に上目遣いになってしまう。




やばい、顔ニヤケそう………。




僕は必死に表情を変えまいと、自分の心に抵抗した。




「ミユの事は、幼なじみとしては好きだけど、恋愛的な意味なら好きじゃないよ。」




そう言うと、リアちゃんは心做しか安堵しているようにも伺えた。




リアちゃん、もしかして………




「妬いてるの?」




そう言うと、リアちゃんは林檎のように顔を赤らめた。




「ち、違うもん………!」




ああ、どうしようもなく嬉しい。




可愛らしいお嬢様、早く僕のものになってくれませんか?




僕は、色々な感情が混ざり合う中、リアちゃんを近くの公園に誘った。






公園はすぐ近くにある為、徒歩で向かった。




向かう間もリアちゃんは、顔を赤くしてあたふたしていたけれど、公園に着くとまだ幼い少女のように騒ぎ始めた。




「わっ!ブランコだ!ブランコに乗るのなんていつぶりだろう?」




興奮気味のリアちゃんは、何もかも忘れて純粋に楽しんでいるようだった。




「タタもおいで!」




そして僕を隣のブランコへ誘う。




「タタは………今幸せ?」




万遍の笑みを浮かべて聞いてくるリアちゃん。




その顔は、特に何かを意図して聞いている訳では無さそうだった。




「うん、幸せだよ。」




リアちゃん、君がいるから幸せなんだよ。




今すぐにでも、そう伝えたい。






僕とリアちゃんは、公園で昔を懐かしんだ後、暗くならないうちに、と学園の駐車場に戻り始めた。




今なら、言えるかもしれない。




本当の僕の姿を。




「リアちゃん」




「タタ」




2人の声が重なる。




「あっ、リアちゃん先に言って。」




「いや、いいよ。梨愛、タタの話が聞きたい。」




そう言ってくれるけど………今から話すのはいい話じゃない。




でも、いつまでも逃げてばかりじゃいられない。




「“俺”、実は………」




「え?俺?」




すると、トラックがこちらに突っ込んできていた。




それも、リアちゃんに近い方に。




「リアちゃん!」




俺は、リアちゃんを手で押した。




なるべく、トラックから離れるように。




ドンッ。




トラックや車に轢かれたら、もっと凄い音すると思ってたのに、実際は思ったほどじゃ無かった。




「タタ!!」




ああ、リアちゃん無事だ。




よか、った…………。