つい先ほどまでの憂鬱はすっかり消えている。
今夜の私の心はとても忙しい。

「本当にありがとう」

言い足りなくてもう一度口にすると、宗君は私の頭をくしゃくしゃと撫でた。
その手が頭から離れてすぐ、私はギュッと腕にしがみつく。

「梨華?まだふらつくのか?」

「うん……なんだかくらっときちゃった」

そんなの嘘。
でも今は、彼に甘えたかった。

「酒、弱いな。俺以外の前であまり飲むなよ」

「うん」

「約束だぞ」

兄心からそう言っているのだろう。
もう今は、妹でもいい。だって、本当に結婚するのだから。


宗君の気持ちが私に向きますように__そう願いを込めて彼の腕に頬をピタリと付けた。