すると宗君は突然、私の肩をグッと引き寄せた。
彼の腕とピッタリくっつくので、途端に胸の鼓動がうるさく鳴りはじめる。

「おじさん、おばさん、俺はどこにも行きません。梨華のこと、俺に任せてもらえませんか?」

宗君は意を決したような面持ちで、両親を見つめている。
それは私の希望からかもしれないけれど、嘘つきの顔には見えない。

「そうね、宗君に対しての不安はまったくないけれど……梨華はどう?
これまで正君とお話を進めて動いてきたでしょう、もうお式まで時間がないのに突然相手が宗君となれば、周りも騒がしくなるわ。
それに梨華の気持ちの問題もあることだし……大丈夫かしら?」

全員の目が私に集中する。なんだか緊張して、手と手を前で組み合わせてギュッと力を入れた。

私の気持ちはまったく問題ない。
結婚に向けて進んでいたのは目に見えるものだけ。
私の心は、少しも正君に向いてなかったのだから。