家へ戻る途中の車内での彼は、私の手をギュッと離さず運転していた。

聞きたいことはたくさんあるはずなのに、胸がいっぱいで何を話そうか迷う。

「随分おとなしいね」と、宗君はクスッと笑った。

照れ臭くなり急いで話題を探す。

「ねぇ、どうして今日実家に来たの?」
 
正君が帰ってきたことで皆大慌てだった。
きっと母は宗君に伝えていないはず。
おそらく父も義父母も正君が逃亡した時に、宗君に話し忘れていたくらいなので不思議に思う。

「兄貴に呼ばれたんだよ。梨華のことで大事な話があるから来いって」

「私の?」

「あぁ」
 
きっと正君は私のために呼んでくれたのだ。
小野さんの誤解を解いてくれるつもりだったに違いない。

「急に帰ってきてそんなこと言うから、焦った」

焦ってきてくれたのは私を想ってくれているから?
そう思ってもいいのかな__。

「ねぇ宗君、いつから私が好きなの?」

自分の質問に胸がドキドキと緊張を訴え始める。

でも知りたい。
半年近く一緒にいたのに、そんな素振りを見せなかった。
反して私はかなりアピールしていたというのに。
今思うと幼稚すぎて心から恥ずかしい。

「梨華は?」

「私はもうずっと昔だよ。お稽古の後に宗君に慰めてもらっていた頃から好きだったよ……ってずるい!私が聞いたのに」

彼はハハッと笑う。