ピロン、ピロンと雅人からのメッセージが続くのを途中から見ないようにして、午後9時半になってようやく波那はベンチから立ち上がった。

 今日は雅人と話をすると決めた日だ。その為に子どもたちも預かってもらっている。真美から話を聞いたのは予定外だったが、その話だけで心を決めるつもりは波那にはなかった。

『今から帰る。子どもたちは優希さんのところに預かってもらってる。』

 家に向かって歩きながら、それだけを雅人に送信した。


 マンションのエントランスホールにあるレストルームで泣き腫らして崩れたメイクを直そう。
 …たとえ雅人にとって女でなくなったとしても、私が女としてありたいのだから。