特等席〜私だけが知っている彼〜2

「犬って飼い主の口とか舐めるでしょ?」

「首は舐めないでしょ!ていうか、テレビ見させて〜!」

このままでは五十鈴のペースに流されてしまう。真っ赤な顔で椿芽は講義し、ソファに再び座り直す。五十鈴が残念そうな顔をしていたのには気付かないフリをした。

『さて、スタジオには元気なカワウソの赤ちゃんが来てくれています!』

テレビは、ロケの映像からスタジオの映像に切り替わっていた。カワウソの赤ちゃんがスタジオに連れて来られ、ゲストたちが触れ合っている。

「五十鈴くん、カワウソを抱っこしたの?いいなぁ〜」

動物の中でも、椿芽はカワウソが一二を争うほど大好きだ。目を輝かせていると、五十鈴に抱き寄せられる。

「すごく可愛かったよ。椿芽にも触らせてあげたかったな」

画面の中で五十鈴が「可愛いですね〜」と言いながら、笑顔でカワウソを抱っこしている。この笑顔にファンなら一瞬にして心を奪われていただろう。椿芽の胸もキュンと音を立てる。