特等席〜私だけが知っている彼〜2

「俺も飼いたい。今のマンションじゃなくて家を建てて、そこで椿芽と犬を飼いたい。その時には、二人だけじゃないかもしれないけど……」

五十鈴は頰を赤く染め、どこか真剣な表情で言う。その言葉を意味を理解し、椿芽の頬も赤くなっていく。

そんな未来がやってきたら、どれほど幸せだろうか。想像するだけで椿芽の胸に幸せが溢れる。

「……いつか、叶ったらいいね」

椿芽がそう言いながら微笑むと、五十鈴は「うん」と頷き、椿芽にもたれかかる。その様子はまるでテレビの中に映っている大型犬と変わらない。飼い主に構ってもらおうと必死な様子に、「可愛い」とスタジオから声が上がっている。

「五十鈴くん、重いよ〜」

椿芽の体はソファに倒れ、その上に五十鈴が乗っかっている。これではテレビに集中できない。

「椿芽といると抱き着きたくなっちゃうんだ。椿芽が俺のご主人だから」

「何それ」

ワンと犬の鳴き声を真似した後、五十鈴はニヤリと笑って椿芽の唇を舐める。それに椿芽が驚くと、今度は首すじに五十鈴の舌が這った。