特等席〜私だけが知っている彼〜2

五十鈴がそう言うと、他のメンバーたちも控え室から出てきて冬子に挨拶をする。冬子は「あなたたちこそ、ライブお疲れ様」と微笑んだ後に椿芽を見た。

「あなた、五十鈴と同棲してるんですってね？」

「は、はい。そうです」

「いつから同棲してるの？」

「五十鈴くんがデビューする前からです」

「告白はどっちから？」

「五十鈴くんからだったと思います」

まるで警察官の取り調べのようだと椿芽は思った。冬子は椿芽を品定めするかのようにジロジロと見つめ、腕を組む。

「あなたの職業は保育士なんですってね？覚悟、できているのかしら？五十鈴は大人気アイドルだから、ドラマや映画で女優とラブシーンを演じたり、予期せぬスキャンダル報道もあるわよ」

冬子に鋭い目で見つめられ、椿芽の心臓がドクンと音を立てる。五十鈴の仕事は理解しているつもりだ。ドラマや映画のワンシーンに嫉妬してしまうことはない。だが、椿芽の口からは言葉が出てこない。