特等席〜私だけが知っている彼〜2

(もしも子どもができたりしたら、五十鈴くんはあんな風に笑うのかな……)

そう椿芽が思った刹那、『五十鈴くん、抱っこ上手〜。いいパパになりそう!』と言いながら五十鈴の隣に女性が並ぶ。髪を緩く巻き、フリルのついたブラウスと花柄のスカートを履いた人形のような可愛らしい女性だ。

「この女の人って、卯月心愛(うづきここあ)ちゃん?最近色んな番組に出てるよね」

五十鈴と並んでずっと話しているのは、最近人気の女優の心愛だ。可愛らしいルックスから数々のドラマやバラエティに出演しており、ファッション誌でも見かけることが多い。

「うん……。一応、人気女優さんだしね」

五十鈴は興味なさげ、と言うよりどこか嫌そうな顔だ。他人が見れば何を考えているのかわからない無表情であっても、幼なじみとしてずっとそばにいた椿芽にはわかる。

「ねえ、カワウソって触った時どんな感触なの?」

椿芽は五十鈴の手に優しく触れ、話題を変える。すると五十鈴はいつもの表情に戻り、「えっとね」と言いながら話し始めた。