心のどこかで、そうなることを望んでいた自分がいたのかもしれない。

締め切られたカーテンの静まり返った真っ暗な空間。
私と影近の匂いが充満した部屋の中で、目が覚めた。
すぐ隣から聞こえてくる息づかいから、影近も目覚めているんだと気が付いたけれど。私はただ天井を見て目ていた。

「ごめんな、唯」
「やめてよ」
謝られたら余計に惨めになる。

「ごめん」

何度も何度も影近は謝っていた。
そのことがかえって私には寂しかった。


あの日一夜の出来事は幻のようで、夢の中のことと忘れそうな記憶。
でも数か月後、月の存在がわかった時、私は現実を知る。
不思議なことに迷いはなかった。
ちょうど休職中で、誰にも知られることなく出産を迎えた。

あの日から、もう5年が経つのね。