イノセント*ハレーション

皆と別れ、大勢の人が去り、閑散とした車内。

あたしの欠伸姿を見られる心配もない。

長めの乗降時間。

どうやら乗り換え電車との待ち合わせであと5分停車するらしい。

その間に席を確保して...寝ようか。

なんて思って前リュックスタイルのまま端の席を狙って1歩2歩と歩きだした、その時。


「雨谷」


あたしは咄嗟に振り返った。

振り返らなくても、誰なのか声だけで分かったけど。

さっき無言で降りていった彼だ。


「何?忘れ物?」

「まーな」


彼はそう言うと、右手に握っていたペットボトルをあたしの前に突き出してきた。


「今日は日葵に付き合ってくれてありがとな」

「そのお礼?俺のカノジョの面倒見てくれてありがと、的な?」

「んなこと言ってない。しかもカノジョだとか、そんな...」


日葵のことになると、毎度挙動不審なのが面白すぎて疲れさえ飛んで行きそうだ。

内心ニヤニヤしながらあたしは弓木くんからペットボトルを受け取った。


「ありがたく頂く」

「あぁ、うん。じゃ、また」

「また」