イノセント*ハレーション

あたしがやっと一呼吸出来て安心している横で彼はぽつりと呟く。


「なんか意外だった」

「何が?」

「雨谷があんなに優しく喋ったり、子供の面倒見たりしてたのが。イメージになかったから」

「それ、失礼だから。あたしだって女子。母性くらいある」


なんて言うとまたクスクスと笑われた。

とことん失礼な人だ。

あたしのこと一体どんな風に思ってるわけ?


「今日は意外な雨谷ばっかり発見する」

「いい?人は多面体なの。冷徹で意固地なあたしだけじゃないってこと、知ってください」

「俺、雨谷のこと冷徹で意固地なんて思ったことないけど」

「え?」


あたしがその言葉に驚いて顔をツツーッと彼の方に向けると、彼はお得意の薄ら笑いではなく、穏やかな笑みを浮かべていた。


「雨谷は...その...話し掛けづらいオーラみたいなのが出てて、ちょっと取っつきにくいところはあるけど、誰かを思いやれる優しさがあるし、常に周りを見て行動出来る。俺、雨谷のそういうところ、素直にすごいって思う」


何、それ...。


「褒めてる?」

「ま、まぁ...」


急に褒められるとどんな表情でどんな言葉を返せばいいか分からなくなる。

だから、ひとまずは


「ありがと」


これだけ言っておく。


「別に俺は何も...」

「何もなんてことはない。あたしのこと、ちゃんと見てくれてるじゃん。それに...伝えてくれた。弓木くんさ、良いやつだよ」


ははっと笑ってあたしは彼の数歩前を行く。

並んでいたら、あたしの顔見えちゃうから。

自分が今どんな顔してるか、なんとなく分かる。

見られると恥ずかしいから...遠退く。

ただそれだけ。


「急ご。皆待ってる」

「あぁ」