イノセント*ハレーション

「こんにちは。1人?」

「うん」

「お父さんやお母さんは?一緒じゃないの?」

「パパもママも、みふゆ、みふゆって、アタシのことちっともかまってくれないの。だから、走って逃げてきた。ちょっとくらい困らせた方がいいんだよ」

「みふゆって妹さんのことかな?」

「うん。アタシより5つ年下の妹。アタシは10歳で、名前はなつみ。夏の海で夏海っていうの」

「偶然だねぇ。お姉ちゃんも名前に夏が付くんだよ。あたしは凪夏。よろしくね」

「よろしく、凪夏ちゃん」


どうやら心を開いてもらえたよう。

でも、ここからどうやって両親の元へ返そう。

自分の意思で逃げてきたのに無理に迷子センターに連れていっても意味がないと思う。

でも、あんまり長くあたしと一緒にいたら、あたしが少女誘拐犯なんてことになりかねないし...。

なんてこれからどうすれば良いか模索していると、夏海ちゃんのお腹の虫が鳴く音が聞こえた。


「もしかして、お腹空いてる?」

「うん...。お昼ご飯食べてないから」

「なら、これどうぞ」


あたしは保冷バックに入っている大量のお握りを見せた。


「うわぁ、すごぉい!これ凪夏ちゃんの手作り?」

「あたしとあたしのおばあちゃんで作ったんだ。具はおかかと昆布とツナマヨと梅なんだけど、どれがいい?」

「アタシ、ツナマヨがいい!」


あたしは白色の小さなシールがついた包みのお握りを夏海ちゃんに渡した。


「はい、どうぞ」

「ありがとう!」


夏海ちゃんは美味しい美味しいと言って喜んで食べてくれた。

その笑顔を見ていて思った。

きっとご両親は妹さんだけのために遊園地に来た訳じゃない。

夏海ちゃんに喜んでもらうために、家族皆で楽しめる遊園地に来たんだ。

あたしは兄弟姉妹がいないから全部を慮ることは出来ないけど、こういう時こそ、おばあちゃんの言葉を思い出す。

親は自分の命より子供が大切...。

だから、心配していない訳がない。

きっとものすごく心配している。

だから、お握りを食べ終えたら出発しなきゃ。