イノセント*ハレーション

やり方は気にくわないけど、一応お礼は言っておこうと思い、あたしは緊張でガチガチに硬直して未だに溶けきらない口を僅かに動かす。


「弓木くん」


彼が振り返る。

日葵はウサギのようにぴょんぴょん跳ねながら前に前に行ってしまう。

あまり離れないうちに言いきってしまおう。


「あり、がお」

「えっ?ありがお?」

「かっ、噛んだ...。今のは、無し」


焦る。

呂律もちゃんと回ってない。

今全然らしくない。

すごく、恥ずかしい...。


「ありがおって何だよ?朝顔の品種改良したやつ?...ふははっ」

「ありがおは...ありがとって言いたくて咲いた朝顔のこと。そんなのも知らないで生きてるって、残念な人だね」

「そんな花ないって分かってて嘘をつく雨谷こそ、残念な人だ」

「...うざ」


あたしの言葉に弓木澪夜はただ笑った。

ずっとクスクスクスクス笑っていた。

そんな彼を見て胸がぎゅうっとなるのはなぜなのだろう。

そして、あたしは...

なぜいつも強がるのだろう。

平気な顔してしまうのだろう。

素直になれないんだろう。

自分のことほど分からないものはないのだと改めて感じる中、日葵と鶴乃さんは次のアトラクションの話をして盛り上がっていたのだった。