イノセント*ハレーション

「ふふ。楽しかった。あれ?朝登くん、大丈夫?」

「あはは。だ、大丈夫。なんのこれしきっ!次はもっとド派手なコースターに行こう!」

「うん!行こう!私楽しみ!」


絶対にもう限界な朝登くんの顔を見てお笑いの虫が胸をくすぐったけれど、顔が硬直してニヤリとも出来ない。

鶴乃さんを尊敬の眼差しで見つめ、一向に動けない手足に信号を送る。


動け、あたしの足...

離せ、レバーを...


だけど、びくともしない。

腰を抜かしたのはもちろん、魂まで抜けてしまったよう。

そんなあたしを見かねて係りの男性が声をかけてくれる。


「お客様大丈夫ですか?」

「あはは」


不気味に笑うことしか出来ないでいると、前方から出口に向かっていたはずのあの2人が戻ってきた。


「待って待って!な~ちゃん大丈夫?!」

「あはは...」

「こりゃ大変だよ、澪くん!なんとかしなきゃ!」


頭も動かないので恐る恐る視線だけをどうにかこうにか動かして頭上を見ると、彼ははぁーっとため息をついた。

こうなることが目に見えていたみたいな顔をしている。

なんかその顔が憎たらしくてムカついて...。

だんだん身体に熱が戻っていく。

彼は乗車前にロッカーに預けたあたしの命を持ってきて被せると、手を差し出した。


「立てる?」


ーーバシッ!


その音とあたしのとんでも行動に驚いたのか、あんなに騒がしかった周りが急にシンと静まり返った。


「むやみに手貸すな」


彼は呆れた顔をして日葵はぽかんとしていた。

何はともあれあたしは立ち上がり、歩くことが出来るようになった。