「伝えない。あたしはずっと...このままがいい」

「そっか。そう...だよね」


鶴乃ちゃんはピョン吉を離し、あたしを見つめた。

あたしは息を飲んでその言葉の続きを待った。


「でも私には...凪夏ちゃんといる時の澪夜くんが1番楽しそうに見えてた。ずっと...羨ましかった。何でも言い合える関係が素敵だって思ってた」

「そんな風に思ってくれてありがと。でも、運命はそうじゃなかった。最初から決まってたんだよ。あたしはそれを覆そうとは思わない」

「うん...分かった。凪夏ちゃんの意思を尊重するよ」

「ありがと。やっぱり鶴乃ちゃんは大人だ」


ちょっと内面に切り込んだ話をしていると、ザッザッザと砂を蹴る音が聞こえてきた。

徐々に大きくなり、それはあたしたちの背後でピタリと止んだ。


「ちょっと~!2人ともこんなとこで何してるの?」

「見て分かるでしょ?ウサギと戯れてるの」

「え~いいな~。日葵もウサギと遊ぶっ!」


日葵が小屋に入ると、ウサギ達は新顔に興味津々なようで、たちまち日葵の周りにウサギが集まった。


「うわ、ちょ、ちょっと~!」


ウサギ達の大歓迎に溺れる日葵。

鶴乃ちゃんはお腹を抱えて笑っている。

これは写真に収めなくてはと、スマホをリュックから取り出そうとした時に気が付いた。

あたしの大事なものが入っていなかった。