イノセント*ハレーション

その直後、彼は両手で顔を覆った。

あたしと絆奈の再会を見ても、今までのことを話す時も1粒として流さなかった涙が彼の目から溢れたのだろう。

それを恥ずかしいとは思わない。

むしろ、今まで我慢してきたことがすごいと思うし、こんなに泣かれたら益々想いが募る。

きっとこんな形で完成形になるようにあたし達は出逢ったんだと思う。


「矢吹くん」


あたしは彼の左手首をそっと掴んだ。


「どんな顔でもいい。あたしに見せて。友達になるんだから、遠慮しなくていいんだよ」


彼はあたしの言葉に何度か首を振った。

あたしはそんな彼の背中を擦り、彼が落ち着くのを待った。

しばらくして、彼は両手を顔から離した。

彼は口の端をぐっと上げて笑っていた。


「矢吹くん、最高。そのままの君でいて」

「雨谷さん...ありがとう。こんなオレを受け止めてくれて、ありがとう。雨谷さんの最高の友達になれるように頑張るから...よろしく」


彼が左手を出してきてあたしは右手で握り返した。

そこから伝わる熱にあたしはぎゅっと胸が締め付けられた。

嬉しくても胸が苦しくなるんだ。

鼓動が騒がしくなるんだ。

また1つ学んだ。

あたしは...もっともっと大きくなれるんだ。


「凪ちゃん、わたしも良いかな?」

「うん、いいよ」


絆奈があたしと矢吹くんの手の上にあたしより小さくてほの温かな手のひらを乗せた。

これで全て終わった。

過去の後悔、過ち、罪を全て清算したんだ。

そして今この瞬間から、

あたし達は友達として再スタートを切る。


「あたしと出逢ってくれて、ありがとう。これからも...よろしく」

「よろしく、凪ちゃん」

「うん、よろしく」


あたしは2人と目を合わせて笑った。

あたしの笑顔が好きだと言ってくれた絆奈に、3年の時を経てようやく再び見せることが出来た。


「皆で笑ってようね」


絆奈の言葉にあたしと矢吹くんは微笑みを称えながら頷いた。