イノセント*ハレーション

「鈴木晃太くん、君だったんだね。絆奈のストーカーは」


鈴木晃太。

そう...晃太、だったんだ。


「何で雨谷さんがここにいるの?絆奈ちゃんはどこ?」

「絆奈ならここには来ない。もう帰ったから。今日はあたしと話をしよう。これまでのこと、そしてこれからのこと、ちゃんと話し合って、そして...」

「あーーーーーっ!!!」


あたしが言い終わらないうちに、彼があたしに向かって突進して来た。

あたしは身の危険を感じ、咄嗟にしゃがみ込み、彼の攻撃を避けた。

彼が錯乱していて行動が鈍いのは分かっていたから、あたしはさっと立ち上がると階段を駆け下りた。

職員室に行って誰でも良いから先生を呼んでこないと...。

そう思わせるただならぬ気迫を感じた。


「ぼくは絆奈ちゃんと話がしたいんだ!絆奈ちゃんじゃなきゃ嫌なんだ!」


そう叫びながら追ってくる彼。

あたしは徐々にその声が大きくなるのを感じずにはいられなかった。

予想外に彼は俊足だった。

やがてあたしは追い付かれ、肩を掴まれると、勢いのまま壁にドンッと衝かれた。

背中がジリジリと痛む。

鈍い電流が全身を駆け巡る。

それでもあたしはやるべきことをやらなければならなかった。

あたしは歯を食いしばって痛みに耐えると、彼にこう言い放った。


「君がしていることは絆奈を笑顔にすることじゃない。絆奈を苦しめることなんだよ。こんなことをしても絆奈は喜ばないっ!だから、もう止めて!」


が、しかし...彼は正気に戻らなかった。


「ぼくは絆奈ちゃんと話がしたいっ!一緒にいたいっ!この手で抱き締めたいっ!触れたいっ!キスしたいっ!ぼくの全部を知ってほしい!受け入れて欲しいんだ!だから、絆奈ちゃんと会わせて!...会わせろよっ!」


これが男子の力かと思い知らされた。

両肩にかかる力で全身がビリビリいっている。

でも、このまま、何も伝えられないまま終わるわけにはいかない。

あたしは目をぎゅっと瞑って、震える手でポケットに閉まっておいたハサミを出した。


「これ以上あたしに近付かないで!」

「うるさいっ!そんなもの、捨てろっ!」

「離してっ!...離してぇっ!」


あたしは壁から離されずるずると階段の方に身体を引っ張られていた。

ここで突き飛ばされたら、あたしは...。