イノセント*ハレーション

あたし達は並んで歩いているというのに、お互いに何も話さないままカーブミラーのある分かれ道へと差し掛かった。


「じゃあ、わたしこっちだから」


そう言い、絆奈があたしに背を向ける。

あたしは何か言わなきゃと思い、接着剤で貼り付けられたかのように動かなかった唇に力を入れ、こじ開けた。


「白石さん、雨...好き?」


なんの脈略もない質問に絆奈はぽかんとしていたけど、やがて肩が小刻みに震え出した。

あたしはなんかまずいことしちゃったかなと青い長靴で小さな水溜まりを踏み、ピシャピシャ鳴らしながら近寄ると、絆奈の瞳には光るものがあった。

それを見てあたしは...決心した。

こんなんじゃ、ダメだ。

あたしがこの子を...守らなきゃ。

いつ、なぜ、そんな正義感を手に入れたのかは分からない。

もしかしたら、また母親譲りの性格のせいなのかもしれない。

でも、このままで良いはずがないと思うその心だけは確かだったから、あたしはそれに従って、想いを口にした。


「あたしが白石さんの笑顔を守る。だから、約束して。あたしと...友達になろう」


絆奈はわんわんと住宅街に響く大声で暫く泣き続けた。

絆奈が泣き終わるのを待っているうちに、段々と空が明るくなってきて、神様の涙も乾いてきた。

あたしが傘を閉じると絆奈も傘を閉じた。

あたしが小指を出すと絆奈も小指を出した。

あたしが小指を絡めると絆奈は唇の端を少し上げた。


「これでもう友達やめられないからね」


あたしの言葉に絆奈は"うんっ"と大きく頷き、にっこりと歯を見せて笑った。

この笑顔のためにあたしは生きるんだ。

そう強く思い、心に誓いを立てた瞬間、あたしの瞳に思わずシャッターを切りたくなるような幻想的な景色が写り込んだ。

雲間から天使の柱が表れ、その奥には虹の橋が掛かっていたた。