イノセント*ハレーション

あたし達はその後、劇を見に行ったり、あたし達のクラスとは違う男女逆転カフェに行って女装をした男子に接客されたり、限られた時間でとにかく色んなところを回った。

そして、教室へと戻ろうと2年生フロアの廊下を歩いていると、5組のところで見覚えのある人物に勧誘された。


「あれ?渡来さんに雨谷さん!」

「あ!矢吹くん。え?凪夏ちゃんとも知り合い?」

「まぁ、ちょっと...」


彼はそう言ってねじり鉢巻を巻いた頭ごとあたしの方に向けてきた。

あたしは挨拶代わりにぺこりと頭を下げると彼はにいっと笑った。


「うちのクラスのお好み焼き最高に美味しいから食べてってよ。特別に半額の100円にしてあげるから」

「矢吹くん、太っ腹だね。それじゃあ、私頂こうかな?凪夏ちゃんはどうする?」

「お得だから食べる」

「2人共まいどっ!はい、出来立てホヤホヤのお好み焼き、どうぞ召し上がれ」


あたしはまだ湯気のせいでカツオ節がゆらゆら揺れているお好み焼きを端で一口サイズに切り、カツオ節を飛ばさない程度にふうふうして口に運んだ。

...あ。

一口であたしは悟った。


「美味しいっ!この甘辛いソースとふわふわの生地が最高だよ」

「だろ?何回も試作を重ねて出来た力作なんだ。雨谷さんはどう?」


彼があたしの顔を覗き込んで来たので、咄嗟にぼそりと呟いた。


「満点」

「やった!雨谷さんから満点もらった!お口に合ったようで何よりだよ」


彼はそう言ってこちらに満面の笑みを向けてきた。

その素直過ぎる笑みにどこかやはり違和感を感じる。

夏に話しかけられた時と同じ、なんかこう...何かと何かが噛み合わない感じをまた感じ取った。

ほとんど話したことのない彼からなぜこれほどまでに感じるのかは分からず仕舞いのまま、あたし達は彼と分かれた。