イノセント*ハレーション

本来この流れで放たれる言葉ではないのだと思う。

どうしてそんなことを聞くのかあたしには不思議でしかなかった。

それ故に十数秒くらいフリーズしてしまったのだけれど、ひとまず答えねばと思った。


「まぁ、イエスかノーかで言われたらイエスだろうね。実際、付き合ってるって間違われるくらいだし」

「え?付き合ってる?」

「いやいや、付き合ってないから。そもそも真昼くんはまだ鶴乃ちゃんのこと好きだし。あたしも真昼くんのことは同志としか思ってないし」

「同志って、どういうこと?」


...まずい。

探られていることに気づくのが遅かった。

あたし完全に弓木澪夜にロックオンされてる。

それもそのはず。

万人の王子様である幼なじみと噂のある女が、庶民以下のあたしなんだから。

とはいえ、これ以上話すと厄介なことになりそうだから、なんとか話題を反らすしかない。

あたしはホットドッグの皿を思い切り彼の前に差し出した。


「同志は同志。同じ釜の飯を食った同志ってこと。弓木くんもさ、食べなよ。ホットドッグ、あたしの自信作だから」


と言った直後、彼は腰を上げた。

俯いたまま、ぽつりと呟く。


「今日はごちそうさま。俺、日葵のとこ戻らなきゃならないから行く。じゃ」

「は?ちょっと...」


彼はあたしの目の前から影武者のように一瞬で消えた。

何が起こったのか分からなくて、あたしはぽかんと口を開けたまま、しばらくドアを見つめていた。

結局、お菓子も軽食も好評だったため、この日提案したレシピで当日も作ることになった。


それから、文化祭までの10日間。

あたしは弓木澪夜と一言も口をきかなかった。

あたしがウサギ小屋に赴いても彼と鉢合わせをすることもなかった。