イノセント*ハレーション

王子様が抱腹絶倒するのを見て周りが若干引き気味になる。

そんなのお構い無しに彼が笑い転げている横で、無言のまま食べ進める猛者がいて、あたしは話しかけた。


「どう?」

「...」


せっかく話しかけたというのに無言の彼。

あたしは仕方なく肩をトントンした。


「あ」


彼は情けない声を上げ、ようやく我に返ったのか、もぐもぐしたままこちらを見た。


「どう?って聞いたんだけど」

「あぁ、うん。美味しい。クッキーもマフィンも甘いもの苦手な俺でも食べられる」

「了解。じゃあ、西村さんに伝えとく」


長話は良くないと思い、立ち去ろうとすると、彼があたしの名前を呼んだ。

あたしが振り返り小首を傾げると、彼はサンドイッチも美味しかったとボソボソと答えた。


「あたしの料理の腕、見くびられては困る」


あたしが言いながらホットドッグも勧めようと皿によそうと、彼はまた口を開いた。


「あのさ」

「何?」


あたしが椅子に座っている彼の方をちらっと見ると、視線が交わった。

久しぶりに彼の瞳を間近で見て胸がどくんと跳ね、あたしは慌てて目を反らした。

動揺を悟られてはならないと内心焦るあたしを捉えたまま、彼は呟く。


「雨谷ってさ...」


ーーカタンっ...。


朝登くんと共にクラスのムードメーカーである長谷川くんが手を滑らせてティーカップを倒してしまい、奥の作業台がパニックになっている。

あたしも、行かなきゃ。

そう思うのに、身体はびくともしない。

それはきっと...彼の瞳のせい。

彼は向こう側の惨劇など構わず、続けた。


「真昼とあんなに仲良かったっけ?」