「雨谷」

「ん?」


あたしの隣を飼い犬みたいに従順に歩く弓木澪夜という男は、今日はいつにも増してらしくない。

気も漫ろっていうか、魂がここではないどこかへ行っているというか...。

それもこれもどれも、ここにはいない日葵のせいであって、

その日葵のための今日なのである。

あたしは冬のクリアランスセールで買ったばかりの黒に青の線が入ったスニーカーの先を見つめながら歩く。

ちらっと隣に視線を移すと、彼の靴もあたしと同じブランドのスニーカーだった。


「プレゼントってさ...告白するしないで変わると思う?」

「そう聞いてくるってことは、告白する意思があるってことでしょ?」

「別にそういう訳じゃ...」


話しながら歩いていると、入り口のドアに差し掛かる。

きっとこのドアの向こうはクリスマスプレゼントを選ぶ人達で溢れ返っているのだろうと裕に想像がつく。

覚悟をしてドアを押すと、案の定、中はたくさんの人でごった返していた。


「すごい人だな...」

「ってことで、目的に応じて効率良く回んないとならないから、ちゃんと答えて。日葵に告白するの、しないの、どっち?」


あたしが立ち止まると彼も立ち止まり、後ろから着いてきた2人の足音も止んだ。

決断に迫られ、整った顔が歪む。

こんな表情、日葵の前では見せないんだろうな。

そう思うと、胸がチクリと痛んだり、逆にふわっと甘い気持ちになったり...。

あたしの胸だって忙しい。

だから、早く答えて。