彼の声が背中をズンッと貫いたけど、あたしは必死に走った。

走って走って走って...。

駅まで辿り着いて、

はぁはぁと息を切らして、

思った。


あの人は...良い人。

すっごく、良い人だ。

きっと、あたしにとって、名前も付けられないくらい不思議な存在になる。

だから、今はそれを楽しみに取っておこう。

いつの日か、

もっとあたしの胸を搔き乱す出来事が訪れることを願って。

あたしはびしょ濡れになったブレザーをコンビニの袋に入れ、電車に飛び乗った。

次々と目まぐるしく変わる車窓を見つめては彼を思い出し、薄気味悪く笑っていた。