イノセント*ハレーション

あたしは右手でスカートの裾を掴んだ。


「あのさ」

「雨谷、もうこれ以上褒め言葉は要らないから。そうやって茶化すなら話さなくていい。ストップ」

「ううん。茶化さない。あたし...ほんとのことしか言わないから」


せっかく汗臭いジャージから着替えたというのに制服にシワがつく。

そんなの分かっていてもこうしていなきゃ、立っていられなかった。

疲れなのかなんなのか、もうワケわからないけど、

とにかく手足がプルプルしてきて立っているのがしんどい。

このままでいるのが...辛い。

だから、さっさと言うことは言って、送り出さなきゃ。

お互いこんなとこで油売ってる場合じゃないんだから。

あたしは大きく空気を吸い込んだ。


「...き、なんだよ」

「えっ?」


言葉がスラスラ出てこない。

こんなこと初めてだ。

弓木澪夜の前でこんな自分になるのは、初めてだ。

あたしは目を瞑った。

何も感じたくなかった。

一切を遮断して言うべきことだけ言おう。

早く、早く...どうか早く言葉を紡いで。

そう思って上唇と下唇にかかる大きな力をなんとか解いて、その隙間から息を吐いた。


「好き...なんだよ。日葵は弓木澪夜のことが好き。湧水くんが言ってたから間違いない。日葵は自分の気持ちに気づいて湧水くんに相談してたんだって。だから...だから、君は...」