イノセント*ハレーション

あたしは声が出なくて咄嗟に彼のジャージの裾を掴んだ。


「雨谷?」


驚いたのかちょっと上ずった声がして、あたしはいつも通りを演じなきゃならないと、変に気負った。

口から自然に言葉が出ることはなくて、初めて決まり文句みたいなあのセリフを言った。


「ラブ日葵くん、今日も良かったね。2人のテニスもリレーも最高だったよ。頑張った甲斐があったんじゃない?」


俯いたままそう言い切って顔を上げると、弓木澪夜は...笑ってた。

口の端をくいっと上げて、日葵を見つめている時と同じ優しくて穏やかな笑みを称えていた。


「本気出さないと手遅れになるから俺なりに頑張った。いつも見てくれてる雨谷が言うなら間違いない。今日の俺は頑張れたんだと思う」

「うん。最高に良く頑張ってた」


そんなに頑張んなくても...通じ合ってるのに。

どちらかが近づけば、確実に結ばれるのに。

それを知っているあたしは、本当のことを伝えるべきなのだろうか。

伝えてキューピッドになるべきなのだろうか。

恐らくあたしは...なるべきなんだと思う。

憧れで、推しの2人を結びつけるために最善の努力をすべきなのだと思う。

だから...言うんだ。

言えば...変わる。

きっと良いように変わる。

あたしの胸のもやもやもざわざわも無くなる。

そう...信じないと。