イノセント*ハレーション

日が落ちてきて辺りはすっかり色を変えた。

1ヶ月前だったら18時といえばまだ空が茜色だった気がする。

9月も後半に差し掛かり、木々に赤やオレンジを譲る季節になってきたから、空はもうお休みの色なんだ。

藍、紺、黒。

暗いけど独特な魅力を持つ3色が、実に微妙な違いで絶妙なグラデーションを魅せ大空という最高最大のキャンバスを彩っている。

生徒達が続々と後夜祭が行われるグランドに向かう中、あたしはまたもや保健室に居座り、涼んでいた。

保健室の先生の顔と名前なんか忘れていたのに、今日はっきりと記憶してしまった。

山口麻友子先生が戻ってきて、入り浸り過ぎよと注意される前に帰らなければ。

あたしは冷やしておいたタオルを首にかけ、冷えピタを額に着けた。

あたしは後夜祭には参加しないで帰るから、もう堂々としていられる。

隠さず病人をやってられる。


「さてと、帰るか」


山口先生が後夜祭の準備にかり出されてしまい、お礼をし損ねたから、あたしはメモ帳にさらさらと感謝を書き残し、デスクに置いた。

これで今日の借りもチャラってことにしてもらおう。

あたしがリュックを背負い、ぺこりと頭を下げて扉に手をかけた、その時だった。